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Could you walk on the water ?
第20章 盗聴
社長室の空気は一変していた。

広瀬は額に汗を浮かべながら、勝利を確信したように堀内沙織を見つめた。

沙織は彼の視線から逃げるようにソファから立ち上がると、窓際に立った。

2階にあるこの部屋からは、たとえ彼女が飛び降りても死ぬことはないだろう。

広瀬は、冷静にそんなことを考えていた。

冬の気配を感じさせる外の山々の風景を眺めている沙織は、ネイビーブルーのノーカラージャケット、同じ色のパンツスーツに肢体を包んでいる。

長く熟れた美脚が、濃厚な官能の気配を伴ってそこにある。

広瀬は、意図的にその肉体から視線を逸らす。

そして、交錯した考えをまとめるように、言葉を発した。

「大介さんの弟さんとあなたは密かに関係を持っていた」

「・・・・・・・」

「大介さんの堀内雄三に対する怒りを、あなたたちは利用しただけだ」

「・・・・・・・」

「まず、あたなたちは大介さんを刑務所に送り込んだ」

「・・・・・・・」

「そのとき、あなたたちが何を望んでいたのかはわからない。不倫関係から夫が邪魔になっただけだったのかもしれない。ただ、そこから別の欲望が芽生えた」

「別の欲望?」

「お金ですよ。堀内と再婚し、彼を殺害して財産を奪う。全てはあなたちが計画し、大介さんを巻き込んだ」

「・・・・・・・」

「大介さんの怒りを巧妙に利用してね」

「・・・・・・・」

「そして今、その全ての罪を大介さんに・・・・」

広瀬の話に、沙織はただ沈黙を貫き続けた。

刑事に背を向けたまま、窓の外を見つめている。

やがて、振り向いた沙織の表情には、しかし、不安の要素はかけらもなかった。
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