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甘いだけの嘘ならいらない
第2章 カクテルに浸かる透明な嘘


コピーした書類を手に会議室に入り、座席に1部ずつ伏せて綺麗に並べていく。


ホワイトボードも真っ白な状態に戻してあるし、いつでもお茶を淹れられるように用意も済ませたから、これで会議が始まるときに困ることはないと思う。


時計は9:40を指していて、席に戻ったあたしは御堂くんにその旨を伝えて、自分のしていた仕事に戻った。






「雛月ー、会議始めるから、10人分お茶淹れてくれる?」

「はい、わかりました。すぐにお持ちしますね」

「助かるよ。ありがとな」



パソコンで取引先からのメールに返信していると、後ろから声をかけられる。


くるりと後ろを振り向いて答えると、北条部長はお礼の言葉を口にして、微かに笑った。


黒髪に、お洒落な太めのフレームの黒縁眼鏡、くっきりとした二重の瞳。


後輩たちが噂してた、甘くてセクシーだという、低く艶っぽい声に耳をくすぐられて、思わずどきりとする。


クールな雰囲気で、見るからにデキる男な印象の北条 翔部長。


赴任早々に一目惚れしただの、恋に落ちただのと、女子社員の憧れの的だった。


英士くんと付き合ってなければ、きっとあたしもそのうちの一人だったのかもしれないと、ふと思う。


英士くんという素敵なだいすきな彼がいるあたしには、遠い存在で、仕事以外で関わることはないーーそう、思ってた。


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