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甘いだけの嘘ならいらない
第2章 カクテルに浸かる透明な嘘


「雛月もどっか食べに行くのか?」

「はい。今朝はお弁当作る時間なくて」

「へえ、いつも弁当作ってるのか。偉いな」

「あはは、褒めてくれてありがとうございます。北条部長は、いつも外で食べてるんですか?」

「いや、俺もいつもは弁当作ってもらってる。けど今朝から嫁が友達と九州に旅行でな。今週はずっと外だな…」

「そうなんですか。いいなあ、九州。あたしも行きたいです」


奥さんがいるのは薬指のマリッジリングから薄々気付いてはいたけど、彼に憧れてる子達が聞いたらショックを受けそう……


だけど、奥さんがいるという話よりも愛妻弁当の話よりも、九州に旅行ってことに食いついたあたしに、北条部長はふっと笑った。


「九州、いいよな。美味いもんいっぱいあるし。福岡とか、出張になればいいのにな」

「明太子とかいいですよね…あたしも出張に行きたいくらいです。ふふ」

「ああ。出張になったら、連れてってやるよ」

「あはは、やだ部長。あたしはただの一般事務なんで、出張には行けないですよ?」

「あー、知らないのか。部長クラスになると出張の時、サポートで誰か連れて行けるんだよ」


言われてみれば、そんな話を聞いたような気もするけど、頭からすっかり抜け落ちていた。


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