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甘いだけの嘘ならいらない
第9章 ただその刹那のためだけに
電車で家まで帰って、テーブルを何の気なしに見ると、折り目ひとつなく綺麗な一枚の書類に、あたしはひどく動揺した。
「……英士くん、待って。こんなの、あたし知らない…」
こんなの、朝は置いてなかった。
実物を初めて見るその紙には、婚姻届とはっきり記されてる。
英士くんの書く欄にはもうすべて記入されていて、証人の欄には奏多くんと、もう一人知らない男の子の名前。
「昨日市役所で貰ってきた。書き方も、見本があるから心配ないよ」