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甘いだけの嘘ならいらない
第9章 ただその刹那のためだけに
「婚姻届、なんて…だって、まだ英士くん……」
「最初は卒業まで待つつもりだった。そんなに焦ってする必要はないって思ってた。…でも事情が変わったから」
事情というのは、あたしのした過ちのことだと、聞かなくてもわかる。
悲しそうに一瞬だけ伏せられた瞳がもう一度開くと、もう待たせないから、と微笑まれた。
「どっちみち、あと数ヶ月もすれば卒業だから。内定ももらってるし、春先は忙しくなるだろうから、先に籍を入れておきたいと思って」