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甘いだけの嘘ならいらない
第9章 ただその刹那のためだけに


「ん……っ…ん」

「理紗、結婚しよう。まだ頼りないかもしれないけど、理紗のこと、必ず幸せにするから」

「英士くん……」

「もう一度、俺に恋をして。あいつじゃなくて、俺に。理紗の全部を、俺のものにしたい。理紗の心に、俺以外の男なんか、二度と入らせないで。……だから、もう忘れてよ」


英士くんは努めて明るくそう言って、あたしはそれが英士くんの本音のすべてだと思った。


優しい瞳が泣きそうに揺れてた。


あたしは、自分がずっと欲しかったものを思い出す。


英士くんと婚約をしたとき、幸せすぎて夢じゃないかって思って、嬉しすぎて涙が止まらなくて。


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