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甘いだけの嘘ならいらない
第2章 カクテルに浸かる透明な嘘
「俺が良いって言ってるんだから、良いんだって。一緒に飯食えて楽しかったし」
「だけど…」
「あーもう、真面目だな、雛月は。じゃ、月曜の仕事の後、予定明けておいて」
「…え?月曜、ですか?」
「今日は歓迎会だろ。だから、月曜」
唐突な誘いに、きょとんとして聞き返すあたしに、北条部長は続けた。
「映画、付き合って。どうしても観たいのがあって…いつも一人で観に行くけど、内容的に、一人だとちょっと」
「え、映画ですか…?」
「ん。とにかく月曜な。いいよな」
半ば押しきられる形で、約束してしまい、断るタイミングを逃してしまった。
奥さんのいる人と映画、なんて。
あたしが逆の立場なら、いい気はしないと思うし、英士くんだって、嫌な思いをするかもしれない。
だけど、部長は深い意味で誘った訳じゃないだろうし、ご飯を奢ってもらったお礼に部長の希望を叶えるだけ……そう思うことにした。