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甘いだけの嘘ならいらない
第2章 カクテルに浸かる透明な嘘


「こんなに可愛い雛月を落とす男がどんな奴か、俺も知りたい」

「ほ、北条部長?何ですかもう…からかわないでください……」

「あ、北条部長、さては理紗センパイ狙ってますね?」


既婚者なのにイケナイ人だなー、と言った鳴海くんの、悪気のない言葉にどきりとする。


既婚者で、大人の男で、仕事もデキて、優しくて。

そんな北条部長が、あたしなんかに気があるわけがないのに。


…なのに、可愛いという言葉に、不覚にも心がきゅんとなる。


「あはは、鳴海くん、そんなわけないよ。北条部長には愛妻弁当作ってくれる優しい奥さんがいるんだもん」

「はは、ですよね」

「優しいかどうかはさておき、嫁は一応いるな」

「え、まさか鬼嫁?」

「どうかな」


やんわりとかわして、笑いを交えて答えると、北条部長は一瞬だけ真剣な表情であたしをみつめて微笑んだ。


意味深な視線に、理由を見つけようとあたしもみつめると、ふっと浮かべた微笑はすぐに消えたから、思い過ごしだったのかもしれない。


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