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甘いだけの嘘ならいらない
第3章 背徳の恋
「英士くん、だっけ。彼とは、いつから?」
「……大学時代から、です…同棲、してて…婚約してます」
「同棲に、婚約か。俺とは対称的だな」
「…だから、あたしは、部長の想いに応えることはできません。部長は……大人で、仕事が出来て格好よくて、優しくて…あたしには、勿体なくて釣り合わないです…」
部長の真摯な視線から、逃れるようにあたしは俯いた。
「あたしには、英士くんがすべてなんです。元カレと別れたばかりで弱りきってたあたしを、救ってくれたの」
あんなにも優しくて柔らかなひとを、あたしは他に知らない。
瞳を伏せて想いを馳せると、彼と初めて交わした言葉を、優しく囁かれた声を、触れられた指先の熱を、今も容易く思い出せる。
『大丈夫。俺は理紗さんと離れたりしない。ずっとずっと、そばにいて、ぎゅっとしててあげる』
『英士、くん…』
『好きだよ。年下で、頼りないかもしれないけど…理紗さんがもう泣かなくていいように、理紗さんを悲しませることすべてから、俺が守るから』
そんな言葉をくれた英士くんを、優しくしてくれた彼を、今まで一度だって裏切ったことなんてない。
北条部長は素敵な人だけど、あたしが触れてはいけない人だと思う。