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甘いだけの嘘ならいらない
第3章 背徳の恋
「っ……ふ、あ…」
「可愛い。そんな色っぽい顔、他の男に見せていいのか?」
「いや……み、ないで…」
「もう手遅れだ。瞼を閉じても思い描ける」
「北条、部長……」
「だめ。帰さない」
あたしは見るも見事に酔いつぶされていて、北条部長の瞳は熱っぽくあたしをみつめていた。
帰らなきゃ、そう思うのに、それは不実行のままに終わっていく。
北条部長に触れられたい、そう願う心の方が、大きくなって。
あたしは取り返しのつかないことをしようとしてるのに、欲に抗うことができない自分が情けなかった。
「…出ようか。少し酔いを冷まさないとな」
北条部長はレジでスマートにお会計を済ませて、ひとりで歩けなくなったあたしを抱きよせて支えながら歩く。
瞳に映る景色はぼやけていて、どこか知らない遠い異国に来たような錯覚にとらわれる。
歩いている道がどこだったか、どれくらい歩いたのか、思い出せなくて、気づいたらタクシーの車内で夢見心地にふわふわと意識が微睡み始めていた。