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甘いだけの嘘ならいらない
第4章 月が溶ける朝
甘い苺ジャムとバターの香りと程良く焼けたトーストの食感を味わいながら、アッサムのミルクティーを口に含む。
コーヒーの苦味が好きになれなくて飲めないあたしは、昔からずっと紅茶派だった。
「……美味しい…でも、翔も紅茶好きだなんて、知らなかった」
「ああ。会社ではブラックコーヒーばかりだからな。目が醒めるように」
「そっか…」
「昨日のこと、覚えてるか?」
「…うん」
目が醒めたときにはアルコールもすっきりと抜けていて、昨夜の夢見心地なふわふわとしていた記憶を冷静に思い出してみる。
そうして心を占める逡巡と後悔に、時間を経るごとに罪悪感が募っていく。
一晩にして呼び方が北条部長から名前の呼び捨てになり、敬語もいらないと言われて英士くんや明日香と話すような砕けた言葉に変えた。
まだ慣れなくて、時々ふと戻ってしまうことがあるけど、あたしと翔の間の色んなことが変わっていくのは、幸せでもあり、怖くもあった。