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甘いだけの嘘ならいらない
第5章 優しさだけのアイロニー
「……理紗」
「なに…?」
「理紗も、好きだよね。俺だけじゃ、ないよね…?」
「っ、……好きだよ。あたしが、英士くんのこと好きじゃないはず、ないよ」
「ん。俺の心配のしすぎだったのかな。ごめんね、変なこと聞いて」
「……ううん」
英士くんに誘われるまま、指先を絡ませあって、歩き始める。
あたしは英士くんに言っちゃいけない。
翔と過ごした夜のことを、肌を重ねて、欲に溺れて、酔いしれたことを、知られちゃいけない。
知られなかったら赦されるなんて、思わない。
これは、あたしのための、嘘。
取り繕うのは、英士くんを傷つけたくないからと言いながら、本当はきっと、あたしが傷つきたくないから。
あたしはずるい。
英士くんのくれる優しさを、愛情を、手放すことを拒むくせに、翔の気持ちにも心を揺らしてる。
そんなずるくて弱いあたしを、あなたはそれでも愛してくれる……?