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甘いだけの嘘ならいらない
第5章 優しさだけのアイロニー
バスルームに入ると、熱いシャワーで身体を濡らしていく。
翔に触れられた身体の熱が、まだ残っているような気がして、恥ずかしさにぎゅっと自分の身体を自分で抱きしめる。
英士くんと出逢って、恋をして、ずっと彼だけのものだった、あたしの身体は、彼以外の温もりを知ってしまった。
「……英士くん…」
意識せずに零れた声は、微かにふるえて、水音にかき消される。
キスだけで、こんなに肌が熱って……
足の間にそっと触れた指先は、お湯ではない滑らかなものが絡みついて、ちいさくため息を吐く。
タオルで泡立てたボディーソープを肌にのせて滑らせて、柔らかな香りに包まれる。
身体を洗ってもあたしの罪が消えるわけではないのに、少しだけ救われたような思いがした。
泡を流して、ゆったりとバスタブに漬かると、肩まで身体を沈める。
お風呂は昔から好きで、いつもわりと長く浸かっていられるのに、今日はなんだかすぐに肌が熱ってしまって、10分もすれば頭がくらくらとしてきた。
ふらつく身体でバスルームを出ると、バスタオルで身体に残った水滴を拭っていく。
着替えを済ませてリビングに戻ると、料理をしていた英士くんがキッチンから振り返って、目を丸くした。