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甘いだけの嘘ならいらない
第6章 騙されてあげる、それは君が好きだから
思わず声が零れてしまって、慌てて視線をあげると、鳴海くんはおでこに手のひらをぴたりと当ててくる。
「…熱、は……なさそうですね。でも、あんまりムリしないでください。よかったら、これどうぞ」
差し出されたのは、飲むタイプのゼリーと、スポーツドリンク。
「え!わるいよ、鳴海くんが飲もうと思って買ったんでしょ?」
「まあ、そうですけど。今日はお茶と昼飯も多目に買ったんで、大丈夫です」
「でも…いいの?」
「はい。あと、これも」
あたしの好きなブラックチョコを箱ごと差し出されて、手のひらに乗せられる。
「あ、ブラックチョコ…あたしが好きなの、知ってたの?」
「いつも仕事合間に食べてるの見てたんで、好きなんだろうなって。俺も好きなんです」
「ふふ、一緒だね。でも、見られてるなんて知らなかった。ありがとう」
熱で体調が悪いわけでも、どこか具合が悪いわけでもないけど、鳴海くんが気遣ってくれたのが嬉しくて、あたしは微笑む。
一口でぱくっとちいさなチョコを頬ばっていると、聞き慣れた低い声が、少し離れたところから聞こえる。