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甘いだけの嘘ならいらない
第6章 騙されてあげる、それは君が好きだから
「おはよう。雛月、体調でも悪いのか?」
「あ、北条部長…おはようございます」
「おはようございます、部長」
「えっと……す、少し熱っぽくて」
熱っぽいなんて嘘。
真実は言えなくて、あたしは笑顔を作って誤魔化した。
「栄養ゼリーにスポーツドリンクなんて置いてるから、風邪かと思った。あんまり無理するなよ」
「は、い…ありがとうございます……」
翔の優しい声音に、胸がきゅっとなる。
鳴海くんにもありがとうと告げて、少し席を外そうと廊下に出たところで、誰かに手首を掴まれて応接室に連れ込まれた。
「……っ、北条部長…」
「大丈夫なのか?」
「あの…だいじょぶ、です……だから」
「……そんな紅い顔で言われてもな」
はー、と呆れたようにため息を吐く翔の視線から逃れるように、あたしはドアに手をかける。
その後ろから抱きよせられて、ドアに鍵をかけられた。