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誘淫接続
第4章 切断
 父や母に会うのは気にならないが、菜奈と甥の拓人にはできればあまり、会いたくない。
 結婚の見込みなど当分なく、大きな夢を追っているでもなく、安月給で決して豊かとは言えない生活を続けている自分が責められている気分になるからだ。

 母は『早く結婚しないの?』とか『いい人いないの?』といったようなことは絶対に言わない。『一人でふわっとしとき』が口癖だ。
 こういう時、普通は『ふわっと』ではなく『ふらふら』だの『ぶらぶら』だのと言いそうなものだが、母曰く『ふらふら』や『ぶらぶら』だと馬鹿みたいだから、自由気ままにというニュアンスを正しく表すには『ふわっと』がふさわしいそうだ。

 父も何も言わないが、母と違って内心、麻琴に早く結婚して欲しいと思っているようだ。たまに顔を出せば、直接言わずに雰囲気でそれを語ってくるのが辛い。
 それでも、結局のところはやはり家族が一番安心できる存在であることに違いはない。

 夢もなく彼氏もできないことに関しては、半ばあきらめもありつつも、寂しくないと言えば嘘になる。母は『女は歳を追うごとに図太くなるんよ』と言っていたが、逆に年々気弱になっていってる気がする。

 いっそ、仕事も何もかも捨てて、実家に帰ろうか。
 『貞操帯』も『草食系男子』も捨てて――。
 麻琴はふと、そんなことを考えた。

 結局、麻琴は貞操帯を外す機会を逃したまま、母の方から話を切り上げるまで三十分ほど電話していた。
 電話が終わると、麻琴はスマホをベッドの上に放り投げるように置いた。そして貞操帯を外そうとスウェットのパンツに手をかけた時、スマホの画面にチャットアプリの受信通知が出ていることに気づいた。

 麻琴は慌ててチャットを開いた。
 相手は『ご主人様』だった。
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