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唇に媚薬
第2章 不器用プリンス
「半分持つの、手伝います」
自販機の取り出し口から、5本目の缶コーヒーを掴んだタイミングで
後ろから柔らかい女の声が聞こえてきた。
「……ったく、あいつら人をこき使いやがって」
「ふふっ♡ みんな嬉しそうに待ってますよ」
「佐伯(さえき)お前は? 何飲む?」
振り返らなくても分かるのは、この女が俺の営業事務……つまりアシスタントだからだ。
テーブルの上に人数分の飲み物を並べると
それを見た佐伯は、目尻を下げて笑った。
「嬉しいな。
私の分まで買ってくださるんですか?」
「大袈裟な言い方するな。
で、どれだよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
金を入れて選ばせると、佐伯はホットカフェラテのボタンを押した。
……俺と同じでブラックしか飲まない蘭とは、正反対。
巻かれた栗色のロングヘアを、耳にかける佐伯を見て
ショートボブのあいつと違うと、また比べてる自分がいることに溜息を漏らす。