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唇に媚薬
第2章 不器用プリンス
“ あなたと恋愛はできないわ。
葵を……そんな風には見れない ”
爆弾が落ちた。
車に轢かれた。
……って一瞬錯覚した程に
いつまでも一方的な想いを抱いている心を、槍でブッ刺された気分。
“ 分かってる ”
言われるまでもねぇ。
蘭にそう告げたのは、呆けた自分に現実を叩き込ませる為。
記憶がある中で、泣いたことは一度も無いが
ロウソクの火が消えたような、悲壮感が凄まじくて
涙が出ないのが自分でも不思議だと思う。
「日本で最大の、総合商社」
「……は?」
「しかもその若さで、エリートコース確定の本社勤務」
視線を外から戻すと
カフェラテに両手を添えた、佐伯がふっと笑った。
「それ程までに整った顔で、抜群のスタイルをしていながら
正当法でここまでのし上がったのは、実力がある証拠」
「………!」
「1人で何億って額を動かせるのは、築いてきた人脈……即ち人望があるからこそですよ」
「…………」
「……社内では、僅差で鈴木さんが人気ですけど
私は瀬名さんが好きです」