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唇に媚薬
第2章 不器用プリンス

「サンキュ、佐伯。
お陰で目が覚めた」


空き缶をゴミ箱に放り込んで、椅子から立ち上がった。
大分時間くっちまったな。
蓮のブラックが温くなってる。


「……瀬名さん」

「礼を言ったついでに、謝っていい?」


まだ飲んでる途中だった佐伯の、伸ばそうとした手を止めて
スーツの両側のポケットに、小さいやつから入れていく。


「……謝るって……何をですか?」

「諸事情で、お前は俺の彼女になってる」

「………!」

「付き合って何年になるかな」


毎回空想で喋ってるから、そのうちボロが出るだろう。
……まぁ、蘭にとっちゃどうでもいいことだから
興味すら持たれてねぇか。


「気持ちわりぃと思うけど、見逃して。
偽ってる相手は1人だけだから、迷惑はかけない」

「…………」

「どうしても、逢い続けたい奴がいて
そいつを繋ぎ止めたいだけなんだ」


「………っ」


「……勝手にごめんな」

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