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散る華如く
第3章 郭を訪れて・・・
「すみません、『華追い屋』の者ですが・・・」

「おや。これは珍しいお客様ですね・・・」

奥から出てきたのは、長い黒い前髪で、右目を隠すように流している男だった。

「あの、わたし・・・この着物を届けに来ました。」

「・・・あぁ、『華追い屋』の遣いなのですね。」

「はい・・・」

「あれ・・・いろはさん!珍しいお客のお出ましかい?」

そう言って現れたのは、ずっと忘れられなかったあの金髪の男だった。

「えっ・・・わたし・・・」

いつの間にか肩を抱き寄せられていて、彼女の頬はさっと紅みが差す。

「ときわ!お嬢さんが困っているでしょう。」

見かねて―いろは、と呼ばれた黒髪の男が諌めるように言う。

「いいじゃないか、けちくさいこと言いなさんな。」

「それに・・・この前の道中で、この娘(こ)は高尾よりオレを見ていたし。」

そう言われて、ますます赤くなるしをな。

「ねぇ・・・しをな。オレを選んでくれるだろう?」

その翠の瞳に魅入られたかのように、しをなは頷いた

「決まりだね・・・行こうか。」

彼はしをなを連れて、二階へと上がって行った。
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