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花に酔う
第4章  椿 * 


「そんな……そんなことまでさせられない……」


そんな震わせた言葉で僕をまた拒む彼女。 

僕を好きになってほしい。
僕を見てほしい。
僕に縋ってほしい。
……せめてそばにいてほしい。

そんな僕の願いを……僕を。
すべてを拒もうとする彼女――――。


「……君の願い……今までずっと聞いてきたんだ」


君の想いは叶えてあげたくて。
わがままのように思えるだろうことさえ、そんなふうに感じずに受け入れてきた。


「……最後ぐらい僕の願いを聞いて」


君の決意を止めることはもうできないのなら。

君が僕をひとり置いていくというのなら。

君がいなくなった後も生きていかなければならない僕を。

その後も生きていけるように……君がいないという現実をちゃんと受け入れることができるように。

君がいないのは僕がこの手に掛けたからなのだと。
ちゃんと――――自分のすべてで納得できるように。


「……勝手に知らないところで知らないうちにこの世からいなくなるなんて……そんなこと許さない」


彼女の瞳が戸惑うように揺れている。


……いっそ狂えてしまえたならどんなに楽だろうとも思う。
けれどもどこまでも正気な僕は、彼女の気持ちを無視することができなくて。
そして僕の中の……彼女を欲する心も無視することができなくて。



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