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花に酔う
第4章 椿 *
「……じゃあ、僕がやる」
思わず口にしていた。
そんなことさっきまで全然頭になかったはずなのに。
口にしたら。
ああ……そうだ。
もうそれしかない――――そう、感じた。
僕の知らないところで。
いつの間にか彼女がその命を絶ってるなんて……想像もしたくない。
かといって彼女が死のうとしているところを見てしまったら僕はきっと条件反射のようにすぐその行為を止めようとするだろう。
だったらいっそこの手で。
僕の、この手で。
彼女は、顔を静かに上げ……。
さっきの僕の言葉が信じられないとでも言うような表情で、見つめてくる。
つ……と。
その大きく見開かれた瞳から零れた涙が新たに頬を伝い。
「……何、言って……」
同時に唇から零れた呟き。
2、3度繰り返された瞬きに。
また頬を伝ったそれは……ぽとり、と。
透明な滴となり落ちていく。
――――ああ。綺麗だ……。
それを目で追いながら。
そんなふうに思った。
手を伸ばし、彼女の頬に触れた。
濡れた感触を覚え、そのまますくうようにして目元まで滑らせた指先。
彼女はまた瞬きを繰り返す。
「いいよね……?」
そして僕の言葉に首を振り。
その拍子に離れてしまった指。