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花に酔う
第1章 紅薔薇
そして、今。
永久に失われてしまった貴方の想い。
……貴方の姿が、視界から消える。
自嘲気味な笑みを浮かべたまま立ち尽くす私の手の中には、貴方から返された部屋の鍵。
もう疲れた、と。
それだけを口にされた。
――――自業自得、だ。
そう思った私には、貴方を引き留めることなどできなかった。
反面。
ほら、やっぱり。
結局貴方は私の元から離れていった、と。
私の考えは正しかったと。
そんなふうに自分を慰める。
もうこれで、貴方の心が離れていく不安に苦しまなくていいのだと。
それはいつなのか、今日なのか。
それとも明日なのか、と。
毎日のように思う苦しさを、もう味あわなくていいのだと、自分に言い聞かせて。
……ただ、黙って。
手の中の鍵をぎゅっと握った。