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花に酔う
第4章 椿 *
知らなかった。
心がこれほどまでに醜くなるなんて。
幸せなときは気付かなかったそれは、とても幸せとは言い難い今、待ってましたとばかりに表に現れた。
彼女を奪われたくなかった。
ずっと僕の隣にいてほしかった。
僕の横で同じ歩幅でずっと一緒に歩いていく相手──。
……そんなふうに、僕だけの彼女でいて欲しかった。
こんなにも。
こんなにも──。
何度それを思い、もがき、苦しんだか。
もうわからなくなるぐらいだった。
汚い自分の心。
見たくなんかなかった。
知りたくなんかなかった。
彼のせいで。
……彼女のせいで、僕は自分のそんな醜い部分に気づかされ、どんどんと深くなるその負の感情に抗う術など持たぬまま、蟻地獄のようにより奥まで引きずり込まれて。
……そうやって、今日もまた。
終わりの来ない絶望に囚われていくだけの自分に、ただ黙って目を伏せるだけ──。