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花に酔う
第4章 椿 *
──いなくなればいいのに。
募っていく想いが苦しい。
小さい頃からずっと、ずっと僕は彼女だけだったのに。
彼女にとってもきっと僕だけだったのに。
なのに後から突然現れて彼女の心をあっという間に奪っていった彼への憎しみがどうしても消せない。
──消えればいいのに。
そんな後ろ暗い想いに囚われて。
僕に彼女を返してと。
あの頃の彼女をこの手に返してとそればかりを考える。
彼さえいなければ──。
きっと彼女はまた僕だけを見る。
ずっとずっと彼女のそばで彼女だけを見続けていた僕に縋るようになる。
やっぱり自分には僕しかいないと、この存在にあらためて気付くに違いなくて。
僕はいつしか、物わかりのいい頼れる幼馴染みの仮面をかぶりながら、ぎりぎりと締め付けられるような苦しみをどうにもできないまま、ただひたすらに彼の存在の消滅だけを願っているような──そんな、最低の人間になっていた。