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藤の舞
第16章 試験
あっという間に小一時間が過ぎてしまった。

どうしても引き留めなきゃ…

焦りながら考える。
一人で歩いている人は、警戒してしまうかもしれない。

手頃に二人で歩いている人に声をかけるようにした。

「すみません…助けてください…」

こうして更に30分ほどして、初めて私の話を聞いてくれる二人組の足を止めることが出来た。

「看護婦さん、助けるって何するの?」

もう一人が返事した子を肘で突っつく。
二人とも軽い感じの子だった。

「一番奥の自販機の下に指輪が入りこんでしまって…」

「どこ?」

「取って欲しいってこと?」

「そうなんです、あと少しなんですけど届かなくて、
男の人の腕なら取れそうなんですけど…」

学生たちが私に着いてきた。

敷地には小石が敷き詰めてあり、自販機の下が見えづらいのは確認済みだった。

「どこ?」

先に返事をした子に聞かれる。私がしゃがむと、その子もしゃがんで覗きこんでくれた。

私は手を自販機の下に入れて、グッと伸ばす。
四つん這いで頭を下げ、お尻だけを高く突き出している。

これで駄目なら、言葉で伝えなければならない。

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