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人妻短編集
第4章 人妻 麗子(45)
「熊谷さん…ちょっと」

月曜日の朝、麗子は黒崎に呼ばれた

「支社長の所へ挨拶に行くよ」

「はい…」

麗子は、まだ、3日前の疲れを引きずっていた


「おぉ、熊谷君、金曜日は大丈夫だったかい?、ちゃんと帰れたかい?」

「はい、支社長のおかげで…」

麗子はあの夜、ガクガクとした脚でタクシーに乗った

まだ電車のある時間だったが、歩けず、タクシーチケットを使った

帰りのタクシーの中でグッタリと寝た…


「いやぁ、本当にご苦労様、君は我が社の女神だよ、こうして改めて見ると、本当に素晴らしい女性だよなぁ」

支社長が誉めちぎったが、嬉しくも何ともない

「まぁ、これで、うちの入札に勝てるとこなんかなくなりましたからね」

黒崎が、ワクワクしたような表情で言った

「こら、そんなこと口にしちゃいかん!」

「こりゃあ、失礼しました」

2人は凄い笑顔だった


「談合」「一円入札」…

そんな言葉が麗子の頭を横切った

そういうことだったのか…

全て最初から仕組まれていたのか…

私だけ、知らなかったのか…

この2人、私が人妻であるにも関わらず…売ったのか…


この業界では良く聞く話だ

「今回は私の番だった、ってことね…」

麗子は、もの悲しく思っていた

「熊谷君、とにもかくにも、今回の件に関しては本当に良くやってくれた、これは臨時ボーナスだ、受け取ってくれ」

「えっ…!」

支社長は、少し厚みのある封筒を麗子に渡した

「まぁ、このことは…君だけのボーナスだから…他の社員には口外しないでおいてくれよ…」

支社長は、口の前に人差し指を立てた

「次のボーナスも期待しといてくれたまえ、ありがとう」



麗子は支社長室を出て、トイレに入った

封筒の中味を数えた

「50万…」

麗子は、今、一体自分に何が起きているのか分からなくなった

しかし、これはかなり嬉しい額だった

「50万…えぇっ…」

麗子の顔に小さな笑みがこぼれた

その瞬間、会社は麗子の口を封じた…






翌週のある日、外で昼食を終えた麗子が会社に戻ってみると、部屋中が熱気に包まれ、皆の顔に笑顔が浮かんでいた

あのプロジェクトを受注したらしい

「そりゃそうでしょうよ」

麗子に笑顔はない

「熊谷さん、部長に挨拶に行くから準備して」
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