この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ラストチルドレン
第6章 貴方の居ない世界

◇
「斉藤楓、よく頑張ったな」
担任の先生から受け取ったのは学年末テストの成績表。
志望校である国立大学を目指して日々勉強している。
ぐんぐん上がる成績に最初は止めていた先生も今は応援してくれている。
あたしが国立を目指す理由。
それは、離婚した母親に負担を掛けたくないから。
卒業後、そのまま就職するつもりでいたあたしに、これからは手に職を持った方がいいと母親は言っていた。
今まで専業主婦だった母親は仕事を探すのに苦労している。
何か資格があればといつも言っていたのだ。
女、一人で生きていくのは大変だとも。
だからこそ、母親を助けるためにもあたしは必死に勉強している。
何かに打ち込むと、何かを忘れられるから。
「また差が開いた~」
隣の席で嘆く翼くん。
彼もまたあたしと同じ国立を受けようとしている。
「どうやったら成績上がるわけ~?」
「食事とお風呂とトイレ以外勉強することかな」
「マジ?テレビも見ないの?すげ~」
「テレビも漫画も見ない。当たり前でしょう。今年だよ?受験は」
「地獄だ~でも、楓と一緒の大学に行きたい~」
お通夜の日から、翼くんはあたしのことを名前呼びしている。
何度言っても止めないからもうほったらかしにしている。
翼くんがあたしに好意があるのは知っている。
何度も告白されたから。
でも、あたしは断り続けている。
もう誰かを愛することは無いと思うから。

