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ラストチルドレン
第6章 貴方の居ない世界
「だから、今は会いに行けないの。ごめん」
「そっか…ごめん。俺の方こそ押し付けて。でも分かって欲しい。俺はずっと好きだから。ウザいなら距離置くわ」
翼くんは物凄く悲しそうに笑った。
その顔に心が悲鳴をあげる。
「お互いに就職して、ちゃんと達巳に胸張って会える日が来たら。その時まで翼くん頑張れる?付き合うとか付き合わないとか、達巳のお墓見たらやっぱり…ってなるかもしれないよ?そんな身勝手なあたしでも好きなわけ?」
翼くんはただあたしを見つめる。その眼差しは先ほどの捨てられた子犬のようなものから何かを覚悟したような男らしい目つきに変わる。
「言ったろ?楓のことずっと好きだって。いいよ、ずっと片思いでも。でも辛くなったりしたら俺が居ることを忘れんでや」
強がりな笑顔を向けて、帰ろうと背中を向ける。
ごめんね、本当に身勝手で我儘な女で。
ホントは怖かった。達巳に会いに行くこと。
きっと一人ではズルズルと会いに行けない口実を作ってたかもしれない。
翼くんの強引な言葉に、少しだけ勇気が持てたんだよ?
ありがとう、翼くん。
彼の背中に聞こえないお礼を投げかける。
あたしはいつも誰かに助けてもらってばかりだった。
いつかちゃんと恩返し出来るかな?
その為にも今は強くならなきゃね。
達巳が居ない世界でも、ちゃんと歩けるように…。