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ラストチルドレン
第6章 貴方の居ない世界
放課後、バイトも無い日は真っすぐ帰宅するあたしに立ちはだかるのは鬼の顔をした翼くんだった。
「なんで、逃げるんだよ」
「別に逃げてないよ。マキいい子だったでしょ?」
「他の女に興味は無いの!余計な事すんなよ」
「じゃあ言うけど、あたしも他の男に興味は無いの」
「達巳がそんなに良いのかよ」
翼くんは余裕が無さそうな顔で問い詰める。
「もう楓を守ってやることも、話も出来ないんだぞ?」
分かってるよ…そんなこと。言われなくても…。
「達巳より幸せにする自信は確かにねぇよ!!楓の中で達巳が今も生き続けてるのは痛いくらい知ってるから!!」
だったら、もうほっといてよ…。
「それでも、俺は楓が好きなんだ!!楓がずっとこの先も達巳の事が好きなら俺もこの先ずっと楓が好き!!」
そんなの、誰も報われないじゃない…。
「忘れろとか、忘れさせてやるとか言わねぇよ!!それでもバカみたいに楓が好きなんだ!!達巳は…アイツはなぁ!!」
吠える翼くんの声が震えていた。
何かを言いかけて黙ったまま。
達巳が…何?
「--達巳は…良いやつだよ。確かに。でも楓を置いてったことは許せないから」
「翼くん…」
「これは楓の為に言う。達巳に会いに行こう?うだうだ考えても仕方ないだろ?俺バカだからさ?無理やりにでも連れて行く。楓もちゃんと言いたいこと達巳に言おう?」
あたしが達巳に会いに行くのは就職してからだと、自分に決めていた。
達巳と同じ社会に出てから、それからだって。