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ラストチルドレン
第3章 壊れていく日常・守りたいもの



楓を抱いた日の事は今でも忘れられない。

瞳とは違う、ただ欲をぶつけただけの行為じゃなく、ちゃんと愛を交わらせた行為。

とても幸せだと思った。

キスする度に愛しいと思い、触る度に目眩を起こしそうなほどクラクラする感覚。

一つになった時は、このまま死んでもいいかな、なんて思ったほどだ。

楓を心が、体が、求めている。

誰かを好きになったりなんて、しないと思っていた。

そんな資格すらないと思っていたから。

幸せになんて出来やしない。

この家に、あの女に縛られたままの俺じゃ駄目だと。

でも、楓に俺が生きてきた時間のことを話したとき救われたような気がした。

そっと黙って手を握り、俺のために流した涙。

その涙と共に、俺に掛けられた鎖が消えてしまったような思いを感じて、俺は楓を抱いたんだ。

今の俺なら、楓を幸せに出来る。

いや、楓と共に幸せになれると。

そう、思っていた。

楓の母親に怒鳴られて、謝った時。

俺にはこんな風に心配してくれる家族なんていないと、少しだけ楓を羨ましいと思えた。

心にモヤモヤした何かを抱えて、帰宅した時。

ーーー携帯が鳴った。

それは、俺がこの世で一番嫌いな女からの着信。



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