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ラストチルドレン
第3章 壊れていく日常・守りたいもの


「もしもし」

出なければいいのに、出てしまうのはやっぱり俺が息子だからなのか。

拒否すればいいのに、しないのは植え付けられた呪縛のせいなのか。

「…達巳…助けて…お母さんもう生きていけんよ」

消え入りそうな声で助けを乞う。

何も感じないのに、電話を切れないのは…。

「何があったん?」

「孝之さんの会社…倒産したんよ…もうお金無いんやって」

この首に残る鎖のせい…………。

「孝之さん…お母さんに暴力してきてな?もう耐えれんのよ達巳…お母さんを助けて?」

助ける義理なんてない。俺を捨てたのはこの女なのだから。

生活費も学費も自分で賄ってきた。

少ないけれど貯金もある。

この女を助けると言うことは、養わなければならない。

俺が必死にやってきたことが無意味になる。

なのに……

何で……

「もう、別れなよ。帰ってきたらいいよ」

俺の口から出た言葉は、これだった。

頼ってくれた。母親が俺を。

バカだろう?捨てられたくせに、やっぱり家族なんだって思えて、受け入れてしまう。

もう、自分のしていることに笑えてくる。

母さんは、分かったありがとうと、言って電話を切った。

溜め息をつく。

母親はいつになったら幸せになれるんだろう。

俺はいつまで母親に縛られているんだろうか。


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