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父と娘の近親相姦日記 第2部 暴走編
第10章 インストーラ
 一通り大橋家の現状を華は語ったが、それ以上つっこんだ会話に発展することもできずその場は終わった。
 柚子が自分の部屋に上がって行ってから、華は私に問いかけた。

 「私たちのことを警察に話していたら、柚子もちょっと面倒なことになるかもしれないよね…」
 「…」
 「一度メールででもリョウタに様子を聞いてみたほうがいいかなあ。」
 「いや、彼の携帯だって押収されているかもしれないから、ヤブヘビになりかねんよ。やめといたほうがいい。」
 「そっか、なるほど。」

 華も部屋に返した後、私は食卓に残された彼女たちの皿を眺めた。

 私の、頭や皮やら血合いやらを残し食べ散らかしたいかにも残飯と見える皿に比べ、彼女たちのそれは食べられるところは完全に食べつくして骨以外残っていない綺麗な皿である。

 彼女たちのこうした作法はすべて妻の教育によるものだが、その妻はあの激しく非人間的に思えた両親によって教育されたのだ。
 十分に裕福な家庭であったにも関わらず、そのようなしっかりとした食べ方を教えてきたというところにはある種純粋な思想というか、人としての大義のようなものも感じる。

 「人は良いことをしながら悪いこともするものよ」

 というのは池波正太郎の小説ではよく出てくる表現だが、妻や娘の日々の動きを見るにつけ、私はそうした人の二面性に思いをはせる癖がついてしまっていた。
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