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§ 龍王の巫女姫 §
第16章 淡く儚く 愛おしく

これ以上、彼を困らせたくなかった。

「…わかっています」

水鈴は切ない笑みを浮かべる。


「わたしはもう巫女ではないし、花仙に避けられるのも当然です…!!」


──もう巫女じゃない

神に祈りを捧げることもできない。


既に水鈴は、何度も男と繋がり

与えられる快感に溺れたのも事実。

生き残った罪悪感から逃れたいがために、炎嗣を殺そうと凶器さえ手にしたのだ。

そのうえ…炎嗣の《生きろ》という言葉に甘え、自分ひとりが寂しさから抜け出したいと願いながら、彼に甘えてこの数日を過ごした。



“ わたしは本当に自分勝手… ”


村での事を忘れて
炎嗣とともに生きていきたいと

ほんの一瞬でも思わなかったと誓えるか?


こんなふうに変わった自分を、花仙が受け止められないのも当たり前──…っ




「…わたし…穢い…? 」


「何を…っ」


「わたしはもう巫女じゃない、綺麗じゃないの…っ だから花仙に会いたいなんて思う資格…なかったんだわ…ッッ」



心が穢れてしまった。


何も知らない昔の自分は、もっと綺麗で透明な心を持っていた筈なのに──。



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