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忘れられない指
第5章 思いもよらぬ・・
「ねぇ咲子ちゃん、聞いてもいいかな」

「なに?孝明さん」

「マスターってずいぶん年上だと思うけど・・どんなとこに魅かれたの?」

「・・う~ん・・やっぱり・・・ファザコンからきてるのかなぁ・・」

聞かれて改めて、考えた。
好きになるのにはっきりした理由なんかって思うけど・・
慎介さんを好きになった理由。
それはやはり、父親への想いとダブっているからじゃないかと・・

「うちのお父さんね、私が中学に上がる時に単身赴任してね。
 週末と長いお休みの時にしか一緒にいられなくて。
 たまにしか会えないとやたらと優しいじゃない?
 だから毎日一緒にいる口うるさいお母さんよりずっと好き。
 穏やかで、いつもうんうんって 頷いてくれるお父さんが大好きで・・
 そんな父にマスターがダブって見えたのかもしれないなぁ」

「なるほどね・・そういう心理、わかる気がする。
 でもさ、好きって、男として好きだったわけでしょ?」
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