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MY GIRL
第8章 出会いと予感
「…っん、」

「っ」

俺の制服の裾を掴み上を向いたまま瞬きを繰り返し、俺を見てにっこり微笑んだ美咲。

「本当にありがとございますっ。…あ、そうだ!先輩、ちょっと来てくださいっ」

そう言って俺の制服の裾を掴んだまま立ち上がり、自販機の方に引っ張られる。

「はい先輩っ!この中から好きなの選んでくださいっ」

「…え?」

「2つでも、3つでも!何個でも奢りますので、選んでくださいっ」

…いやいや。

「俺コンタクト拾ってやっただけだから」

「いえ!あたし、こっちの視力ほんと悪くて…見つけて貰ってなかったら泣いちゃってました。ほんとにありがとうございます」

コンタクト拾っただけでこんな礼言うのかこいつは…

「…よかったな、拾ったのが俺で」

「…?はいっ」

俺じゃなかったら身体で払えとか言われてたと思うよ。

俺も言ってみたかった。

言わないけど。

「さあ、選んでくださいっ」

「いいよ、気持ちだけで十分」

「でも、ほんと嬉しかったんです…あたし、コンタクトしてないとほとんど目見えないから。よりによって悪い方の左目のコンタクト落としちゃうし」

「そんな悪いんだ?」

「はい。コンタクトなかったらここまで近付かないと見えないんですよ〜」

「…っ」

こいつ…マジで無自覚か!?

右目を手で隠し、あと数cm近付いたらキス出来るくらいまで俺の顔に近付いた美咲。

しかも、相変わらず俺の制服の裾を摘んだまま。

そして、あっさり離れていく。

「あたしは何にしよっかな。やっぱりりんごジュースかなぁ」

呟きながら自販機の前を行ったり来たりする美咲。

胸の動悸が治まらない。

初めて抱いた、特別な感情。

もっと触れたい、知りたい、声を聞きたい、一緒にいたい…

この時は、この感情が何なのか知る訳もなく。

ただ、にこにこしながらりんごジュースを買う美咲をずっと見つめていた。

「先輩は、どうしてこんな時間まで学校におられたんですか?」

「…っえ?」

くるりと俺を振り返った美咲を見て我に返った。

「…あ、あぁ…生徒会の仕事してたから」

動揺を悟られないように平然を装って言うと、俺の様子を全く気にしていない美咲が感嘆の声を洩らす。


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