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秘蜜に濡れて
第2章 夢見たいつか。
繋いだままの左手を後ろから見つめながら、あいりは早く頬を抓りたい思いに駆られていた。

非常階段の死角に入ると急に撥春の足が止まった。

振り返った撥春は真っ直ぐにあいりを見つめた。

真剣な眼差しにあいりは自分が赤面していると覚った。

「好きです」

あいりの心臓が跳ね上がる。

「でも、いつ…」

軽いめまいすら覚える告白に頭が混乱して言葉が出ない。

「君は知らないかもしれないけど、俺は君を知ってた、ずっと前から」

ずっと前から?

繋いだ手に少しだけ力が込められる。

あいりが口を開く前に、撥春が手を離した。

「戻らないと、また後でね」

重くドアが閉まる。

入って来たときは全く聞こえ無かったのに。

温もりを失った左手に右手を重ねて、そっと胸に当てた。
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