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愛無き、故に恋
第2章 薔薇
広い部屋にピアノの旋律が水の波紋のように広がっていく。

「月光か。今夜は新月だよ、ローズ」

ドアの近くにいたことに気がつかなかったようだ。

「夜桜、新月なの?新月なら ティアーズ・イン・ヘヴンが良かった?」

そう言って、微笑み、手を伸ばされる。

この甘美な誘いを断れる男がいるならば是非会ってみたい。

妖しくて、はかなく、艶やかで可愛い。

薔薇姫。

彼女はこの呼称が大層お気に召さないらしい。

だから、来る者すべてに花の名を付ける。

おあいこだと。

伸ばされた華奢な腕を掴み引き寄せ、抱きしめる。

ライトなキスはやがて、熱の篭ったものに変わっていった。
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