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ジェミニの檻
第11章 Subtle shift
六花は頷きかけて、志貴が帰ってきてるのを思い出す。

「じゃあ私も帰ろうかな」

「だめ!今日は泊まってでも、全部終わらせる約束だろ?一時間で戻るから」

「う、うん…」

押し切られる形で電話を切ると、カバンにノートを詰めて玄関に向かった。

「どっか行くのか?」

「渉がノート、コピらせてって言うから行ってくる、夕飯肉じゃがだから、作っといて、あと六花がサボらない様に見張っといて」

「サボりませんー」

「行ってきます」

バタンとドアが閉まると、六花はちらりと盗み見る。

シトラスのシャワージェルの香りと、髪から落ちる雫がグレーのTシャツの色を変えていた。

志貴はすぐに踵を返しリビングへと入って行った。

「さっさと課題済ませろよ?」

冷蔵庫から麦茶を取り出すとコップに注ぎ一気に飲み干すと、すぐにお代わりを並々と注いだ。

課題に向き合うと、冷蔵庫を開ける音がして、規則正しい包丁の音が聞こえてきた。

肉を焼く音、野菜が炒まる音、水が加わり蓋をされて全ての音が小さくなった。
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