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第1章 錆
 金属が肌から離れる。
 バチンと頬を打つような音がしたあと、羽音が止んだ。
 そして、再び金属のひんやりとした感触が肌の上に乗る。
 ころしたん?
 返答のない腹の上の手が、羽音を排除したように、私の身体からも音の根源を排除していく。
 目を開けると、私のお腹の上で、右手に握られていた金属にも、赤い錆が浮かんでいた。

 引っかかりながら、音を立てながら。
 錆は切れ味を落として、私を排除していく。
 さっき左手で私の恐怖を排除したように。
 緑色に光る小さいいきものを排除したように。

 こんなんいらんのににな。と呟きながら、排除していく。
 あの真っ赤な口紅したおばはんの。
 真っ赤なパンツから透けて見えてたよな、あんなん。
 白いブリーフ毎日洗濯してたあのおばはんが穿いてたレースの下の。
 毎日床拭いて皿洗って。
 虫が飛んでたら殺してくれた。
 あのおばはんみたいな。
 あんなんいらんのにな。
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