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着せ替え人間
第1章 着せ替え人間
「いっちゃん大好き」

 あのときの私は130を着ていたはずだ。

「いっちゃん気持ちいい?」

 いつから私は、こうして自分からいっちゃんに会いに来て。

「ねぇ、顔も写して?」

 こんなことを、レンズの前で言うようになったのだろう。


 いっちゃんは繋がった場所を摩擦したまま、ははっと声を上げて笑った。


「やだよ。それじゃただの趣味になっちゃうじゃん」
「趣味じゃないの?」
「ちがうよ」

 ちがう。
 これはね。
 脅迫。

「最近さ。おまえが俺のために服まで持ってくるようになったろ。そのうえ、こんな時間まで俺の部屋に居座ってさ。それで、俺に好きだなんて言うだろ。もしかしたらおれ、近いうちにおまえに勃たなくなるかも知れないよ」

 コンドームを逆さまにしながら、いっちゃんは笑っている。
 だらーっと中身が舌の上に落ちてくる。
 全部滴り落ちたのを見届けてから、口を塞いだ。

「俺はおまえのその、着せ替え人形みたいなとこが好きなんだ」

 茶封筒の宛名は書いた。
 あとは、テープで封を閉じるだけ。
 そうしたらいっちゃんの銀行口座にお金が。

「俺もっと、お前の悲しむ顔が見たい。泣いてる顔とか。あの時みたいに。ほら、お前人形みたいだったよ。どうしようも出来ないって顔して好きなようにされてるだけの。諦めきって・・・そうだ。泣いてるような泣いてないような笑顔のような無表情のような。ああいう顔が見たい。でなきゃ俺、実物のおまえに勃たなくなるよ。今だって、撮影した画像観ながら腰振ってたよ。よがってるおまえの顔見たら俺、モノ凄く冷めるんだ」

 私が彼氏と遊んでばかりで寂しいと嘆くママが、本人の知らないところで、いっちゃんに間接的に与えているも同意義の、小遣いが。

「なぁ?どんなことしたら、おまえの顔、あの頃の顔に戻る?考えて俺に教えてくれよ。そうして、俺にその通りのことさせてくれよ。俺のことほんとに好きならさ」
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