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着せ替え人間
第1章 着せ替え人間

ただいま。
明かりのついたままの玄関に帰宅の挨拶をする。
リビングからパパとママの声がする。
カード、限度額、通帳のマイナス。
妹の泣き声。
ママの怒鳴り声。
パパの抑えた苛立ち。
薄いゴムを介さないいっちゃんの感触を思い出しながら、毛玉の出来つつある転売価値の落ちたセーターを脱いで床に落とす。
同じようなスカートを、ロンTを、シャツを、そして。
逆さまにしたコンドームの中身のような流れで。
奥のほうから流れ出すものの温度を感じながらパンツを。
ママがスタンプで消す顔と。
いっちゃんが撮影しない顔で。
トイレに駆け込んで、ブランドキャラクターのクマが佇むカレンダーで。
先月の赤マルから逆算して。
そして。
指先が行き着いた数字を確認して。
「いっちゃん。今の私の顔になら、勃つ?」
自分にしか聞こえない声で、そう言って扉を締めた。
人形のようなからだを隠すように。
人間であることを隠すように。
ママといっちゃんの現実では、ずっと着せ替え人形でいられるように。
【おしまい】
明かりのついたままの玄関に帰宅の挨拶をする。
リビングからパパとママの声がする。
カード、限度額、通帳のマイナス。
妹の泣き声。
ママの怒鳴り声。
パパの抑えた苛立ち。
薄いゴムを介さないいっちゃんの感触を思い出しながら、毛玉の出来つつある転売価値の落ちたセーターを脱いで床に落とす。
同じようなスカートを、ロンTを、シャツを、そして。
逆さまにしたコンドームの中身のような流れで。
奥のほうから流れ出すものの温度を感じながらパンツを。
ママがスタンプで消す顔と。
いっちゃんが撮影しない顔で。
トイレに駆け込んで、ブランドキャラクターのクマが佇むカレンダーで。
先月の赤マルから逆算して。
そして。
指先が行き着いた数字を確認して。
「いっちゃん。今の私の顔になら、勃つ?」
自分にしか聞こえない声で、そう言って扉を締めた。
人形のようなからだを隠すように。
人間であることを隠すように。
ママといっちゃんの現実では、ずっと着せ替え人形でいられるように。
【おしまい】

