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初花
第1章 琥珀
私が冷酷なのは
妻との不仲、側室の不在など

柔らかい肌を 閨で
久しく抱いていないからだろうと、
わけ知り顔で 家老が言う。




…閨か。女も男も おなじように媚を売り
おなじことをする。


週に一度「 一人きりで座禅を組む故
戦でも起きぬ限り
誰も奥へ来るな」と 断りを述べて
些かの薬を混ぜた酒を飲めば
己の手でも事足りる 快楽よりは


国を動かし 他国の新しい物を知り
天下をとるほうが よほど興が乗るのだが、、


あまりに煩く誘うので 廓に来た。



興が乗れば 或いは抱いてもいいが
それを機に度々誘われるのも
煩わしいなどと 思っていた。


…あの者の姿を 目に留めるまでは。





廊を歩く姿をひとめ見て
美しいと思った。

着流しの姿は 明らかに女ではなかった。

男とか、女とか
そのような 隔てが意味をなさない存在。

それが、龍だった。

まだ なにも悦びを知らないと見える
細く硬い、腰の線。

素のままで しろい肌は 肌理がこまかく
優美な輪郭に 高いはなすじ。


ひとの気配を感じたか
ふりむいた瞳の色は 琥珀に透けている。
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