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初花
第4章 猫柳
この頃では ごく穏やかに過ごしていたせいか
彼は 戸惑い気味で


私の機嫌を窺うように そっと
小さな手で 胸などどこかしらに縋るように触れることもなく
隣で 横たわっている。



縮まった距離が 幾らか遠退いたような、物足りぬ気がして
夜具に置かれた手に くちづけたのち
引き寄せれば 抱いた背中には 微かに強張りがあり


「牡丹を観れば 里心か。ここから逃がしてほしくなったか」


「逃げる、など、、 置いてくださるうちは
お仕えするつもりですけれど」



その眼をみれば 偽りはなく、瞬きが哀しげにもうつる



、、怖れたのは 此度も私であった。
いつのまにか 心ごと掌のうちに捉えていたいと願っていた。


何を投げ出せば 龍は私を求めるのだろう

過去の己には 愚かにすら思えるはずの願いを秘めて
花油の香りのする髪に、唇を寄せた



「それならば良い。 私には、其方がなくては、、
生きてはゆけぬ」



「、、 そのような、、こと、、
殿が仰るべきではなく。 わたくしこそ」



もしかすると 私の願う意図とは違うやもしれないが
その言葉をきけば、強く抱かずにはいられない。



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