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初花
第4章 猫柳
あの様な心持ちで居る時こそ
此れまでの私なら 責め立てるように
龍を激しく抱いたであろうが


未だいくらか 熱の有る身体を拓き求めるのは
何故か 憚られ

一度 外へ出て酒を煽った後に 帰ると
既に眠り込んでいた彼を腕の中に抱き 就寝した




朝ともなれば、昨夜 問い詰めた事など触れもせず
ほぼ咳の止んだ彼のために 次は滋養に良い薬湯を
医者に処方させて

空いた時間を見繕い 自ら届けに戻れば
庭に その姿が在る。








外の 水桶に張る氷が、割れたのを
手に掴み取ったばかりの様で

「中に 紅い実を閉じこめて、
玻璃のように 美しいのです」

差し出してくる指は かじかんだのか
濃い桃色に染まっている





「冷たいであろうに。」


「とても」


そして 無邪気に微笑むと、
さらにそれを割り 南天の実を避けた後
氷の欠片を ひとくちに食んだ。


初めて眼にした無防備な笑みは、稚くすらあり
愛おしい痛みを 私に教える。
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