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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
1時間を経過しても、まだ本宅に到着しなかった。

「ねぇ、まだ着かないの?」

「行きは2時間近くかかりましたから…でも、山本さんの奥様がお食事を用意してくれる約束の時間には間に合いますよ。静香さん、お腹減ってきましたか?」

「そんなに食欲はないわ。こっちに来てから、今日で三日目だけど、昨日まで、来た日以外、外出もしてないから…。」

「少しでもいいから、お食事は抜いたりしないで、きちんと召し上がってくださいね。」

「そんなこと言われなくても…、私もう高三よっ!何回も言ったけど、子供扱いしすぎよっ!出されたものはキチンと食べてますっ!山本さんの奥様に失礼のないように…。お世話になってるんたから。」

「それは失礼しました。でも安心しましたよ。」

「相沢はいつになったら、私を大人として見てくれるの?高校卒業したら?私が山本さんや山本さんの奥様にまでわがまましてると思ってたの?」

「いいえ、そんなことはありません。」

「さあ、もうすぐ着きますから。」

車が本宅の長屋門の前で停まり、相沢圭司が走って、門扉を開けに行く。そして車は庭を通過し、玄関前に停車した。

相沢圭司がまた運転席から降りて、私の座っていた後席のドアを開けた。本宅には明かりが燈っていた。山本さんの奥様が来ているのだと思った。

「静香さん。先に上がって、食堂にいらしてください。」

「言われなくても、わかってるわ。」

夕食は近くに住んでいる、山本さんの奥様が、準備して待っていてくれた。山本家は三世代同居の大家族だから、私たちのために、わざわざ食事の用意をするというより、おすそ分けという感じだった。

「お嬢様、お帰りなさいませ。お疲れになったでしょう?いかがでした?K岬は?」

「すごく綺麗な海を久しぶりに見ました。」

「それはようございました。」

「お食事、相沢さんの分も、今ご用意いたしますからね。」

山本さんの奥様は、こんな田舎に似つかわしくない、田舎訛りもない、上品な方だった。

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