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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
私と相沢圭司は、一言も会話せずに、夕食を摂った。その間山本さんの奥様は、2階のお部屋の布団替えをしているらしかった。

「ごちそうさまでした。」

相沢圭司が先に、食事を済ませた。その頃、山本さんの奥様もキッチンに降りて来て、私が散らかしていた、パジャマや普段着、下着類をカゴに入れたのを見せて、

「お嬢様のお召し物、洗濯しておきますね。明日までに乾燥させますから、また明日の朝食の時、お持ちします。お着替えはまだございますね?」

「ええ大丈夫です。でも下着の洗濯くらいは自分でしますよ。」

「そんな、お嬢様は何も気にせすに、お泊りくださいませ。」

私も食事を終えた。

「ごちそうさまでした。今日のおかずのお刺身も、たいへん美味しいものばかりでした。ありがとうございました。」

「いいえ、それではお片付けいたしますね。」

そう言って、何から何まで、お世話をしてくれた。

私の食事が終わると、相沢圭司も席を立って、下膳を手伝い始めた。

「お風呂もすでに、用意できていますから、お嬢様、食休みしたらお入りくださいね。上がったら、保温のスイッチを切るのだけお願いいたします。」

「はい。わかりました。わざわざありがとうございました。」

「そうそう…相沢さんのお部屋のある離れの方は、まだなんです。今用意しますから。」

「いいえ、奥様、私が自分でいたしますから、お気遣いなく。離れの方は大丈夫です。それから山本さんには、今日は相沢が警備をかけるからとお伝えください。」

「ええ、そう申し伝えます。では私はこれで、お暇いたします。お嬢様、おやすみなさいませ。」

「おやすみなさい。」

私はまた、相沢圭司と二人っきりになれた。古い時計の音がやけに、響いて私の耳に残るほど静かだった。
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