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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
私は静かに、離れの玄関ドアに鍵を差し込み、開錠した。

ゆっくりドアを開けた。玄関のセンサーライトが点灯しなければ、暗くて、鍵穴も見つからなかっただろう。私にとっては天佑だった。

しかし、10㎝くらい開いたところで、またロックが懸かった。

私が開けた鍵穴は縦に二つ並んだ鍵穴のうち、上だけだったので、途中でロックされたのだ。相沢圭司は用心深く、ダブルロックしていたのだ。

私はもう一度、ドアを閉め、やり直さなけれはならなかった。2回目は成功した。

玄関内に入り、ドアをそっと閉める。まだ気付かれない。もう離れに入ってしまったのだから、私のものだ。相沢圭司が無理矢理母屋に追い返すとは思えなかった。

でも、ここで声を掛けるより、いきなり相沢圭司の部屋に侵入して驚かせたいと考えた。

玄関からリビングへ通じる扉は開け放たれていて、室内はエアコンも効かせていないため、外は涼しいのに、むせ返る暑さだ。私は額に汗をにじませて、階段を上った。階段はしっかり出来ていて、軋むこともない。

階段を上り詰めると、ドアの僅かな隙間から光の洩れる部屋があった。

相沢圭司のいる部屋だ。相沢圭司は1番狭い、フローリングの6畳間を使っていた。

この時、私の心臓は今にも破裂しそうだった。

どういう態度で、彼の前に現れるのがいいのか一瞬悩み、頭の中で、考えがぐるぐると回転し始めた。
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