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莉愛菜と彼の主従関係~専属奴隷契約~
第56章 奪還
俺が拳を振り降ろしたのと、莉愛菜が俺を呼んだのは同時だった。
男の頬ギリギリで止まる拳。
殴られると思って目を瞑っていた男はこ恐々と目を開く。
「莉愛菜、本当にいいのか?
恐い思いしたのはお前なんだぞ。」
振り返って莉愛菜と視線を合わせて問う。
静かにコクリと頷いた。
「莉愛菜っ……」
自分を庇う莉愛菜を見て、男は驚いている様子だった。
こいつは俺が近づいても逃げなかった。
逃げずに俺に殴られた。
胸倉を掴んでも、静かに俺の目を見据え、そして覚悟するように目を瞑った。
その瞳は、あの日俺が見た狂気を宿した瞳では無かった。
きっとこれが本来のこいつの姿だろう。
こいつが勝機を取り戻したから、莉愛菜は俺に殴らせなかったのかもしれない。
俺としては最後までこの男を思う莉愛菜の行動は不愉快極まりないが。
莉愛菜が想うのは俺だけでいい。