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莉愛菜と彼の主従関係~専属奴隷契約~
第76章 存在意義
あたしの濡れた髪を耳に掛けながら、涙を流す海斗は震える声で言う。
「もう一度…呼んでっ」
あたしは掠れる声で呼ぶ。
「……海斗っ」
するとまた力強く抱きしめられた。
「莉愛菜っ。もう、どこにも行くな。
俺を独りにしないでくれ。
俺はずっとお前の傍にいたい。」
海斗はいつも、あたしの欲しい言葉をくれる。
あたしは返事の代わりに、海斗の背中に腕を回しあまり力の入らない腕で精一杯抱きしめ返した。
あたし達の上からは、シトシトと静かに雨が降る。
その雨にただ濡れながら抱き合っていると、あたしと海斗の不安が少しずつ消されているような気がした。
それくらい、久しぶりの海斗の温もりは暖かくて、安心した。
ずっとあたしの名前を呼びながら、抱きしめ続ける海斗。
こんなあたしの傍にいたいと言ってくれた。
どれだけの時間、そうしていただろう。
海斗はあたしに触れるだけのキスをする。
そして二人、泣きはらした目で小さく笑い合う。
いつの間にか雨はやみ、空は雲が千切れ、虹がかかっていた。